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2025年9月7日ブログ
社長が知っておくべき役員賞与と手取り額の関係 ― “10倍ルール”がもたらす落とし穴?
経営者からよくいただく質問に「役員賞与を支給すると、手取りはどのくらい残るのか?」というものがあります。
額面が大きくなるから当然手取りも大幅に増えると思いきや、実際には社会保険料と所得税の負担が重く、思ったより残らないケースが多いのです。
さらに見落とされがちなのが、賞与にかかる源泉所得税の“10倍ルール”。高額賞与を出したときに「なぜこんなに税金が高いの?」と驚くのは、この仕組みが影響している場合があります。
シミュレーション
Aさん(現在35歳)は大学卒業後に起業し、社長として日々業務に励んでいます。 現在の役員報酬は月額50万円としていますが、来期から「事前確定届出給与」を利用した役員賞与の支給も検討中です。 そこで、役員賞与を増額した場合にどの程度の手取り額になるかをシミュレーションをしてみることにしました。 今回は、月額の役員報酬は現状(50万円)のまま、役員賞与を300万円から1,500万円(年1回)まで、300万円刻みで役員賞与を支給した場合の手取り額を比較していきます。 |
役員賞与を300万円、600万円、900万円、1,200万円、1,500万円に設定した場合の手取り額をシミュレーションをしてみたいと思います。
シミュレーションにあたっての前提は以下の通りです。
・令和7年9月現在に施行されている税法に基づいて計算しています。
・扶養なし・独身を前提としています。
・社会保険は沖縄県で適用される保険料率(協会けんぽ)を使用しています。(健保=年度573万円上限、厚年=1回150万円上限)
上記の前提をもとに計算したシミュレーション結果は次の通りです!
賞与300万円 | 賞与600万円 | 賞与900万円 | 賞与1,200万円 | 賞与1,500万円 | |
---|---|---|---|---|---|
額面 | 3,000,000円 | 6,000,000円 | 9,000,000円 | 12,000,000円 | 15,000,000円 |
社会保険料 | 286,950円 | 423,177円 | 423,177円 | 423,177円 | 423,177円 |
源泉所得税 | 443,203円 | 1,076,340円 | 2,020,212円 | 3,030,996円 | 4,041,792円 |
手取り額 | 2,269,847円 | 4,500,483円 | 6,556,611円 | 8,545,827円 | 10,535,031円 |
※社会保険料は、厚生年金保険料・健康保険料の合計額です。
役員賞与ごとの額面に占める社会保険料、所得税、手取り額のそれぞれの割合は以下の通りです。
賞与300万円 | 賞与600万円 | 賞与900万円 | 賞与1,200万円 | 賞与1,500万円 | |
社会保険料 の割合 | 9.6% | 7.1% | 4.7% | 3.5% | 2.8% |
源泉所得税 の割合 | 14.8% | 17.9% | 22.4% | 25.3% | 26.9% |
手取り額 の割合 | 75.7% | 75.0% | 72.9% | 71.2% | 70.2% |
シミュレーションの結果から、下記のことが分かります。
社会保険料は上限ありで頭打ち
→ 賞与を増やしても保険料の絶対額は大きく変わらず、相対的な負担割合は下がって見える。
所得税は累進課税で急増
→ 高額賞与を出すほど税負担が急に重くなり、手取り率は低下する。
“10倍ルール”でさらに源泉税が跳ねる
→ 賞与が「前月の課税給与の10倍」を超えた場合、その超えた部分はより高い源泉率で計算される。
→ 役員賞与のようにまとまった金額を支給すると、このルールで源泉税が一気に大きくなることがある。
結論
役員賞与は、
- 社会保険料は一定の上限で頭打ちになりますが、所得税は累進課税で増え続けます。
- さらに、賞与が前月給与の10倍を超えると源泉所得税が跳ね上がる“10倍ルール”があるため、思った以上に手取り率が下がるのです。
法人の損金効果と役員個人のキャッシュフローを総合的に見ながら、報酬と賞与のバランスを設計することが大切です。
賞与支給を検討する際は、必ずシミュレーションを行い、専門家に相談してみてください!